本質的な構図の話をしてみます。

何が本質的で何が本質的ではないのか、なかなか難しいですが、

写真を勉強していく過程で、見て学ぶではなく頭で読み解くということが必要になってきます。

構図も同じです。

日の丸構図・三分割法・黄金比・シンメトリー、ネットで調べれば山ほど出てきます。

最初はその構図を必死で覚えて、頭に叩き込みます。

でも…。

構図を覚えたのに、なかなかそれが使いこなせない、という経験はよくあります。

写真教育の過程で、人に教えているとわかるのですが、根本的に構図をどういうものとして捉えているかの考えが、上手く構図を扱えている人と、そうでない人とは根本的に違います。

構図というものを、他のものに例えて分かりやすくいいます。

構図を料理で例えるなら、構図はお皿です。グラスでもいいです。

かつ丼を食べるなら丼ぶりに、ご飯を入れるならお茶碗に、ワインを入れるならワイングラスに、品によって受け皿は変わります。

その料理や品がよりおいしく見えたり、食べやすかったり、飲みやすかったり、受け皿によって変わるからです。

ワインもワインだけでは味わえなくて、必ずワイングラスが必要になります。

ワインが中身でグラスが外身で、その両方を合わせてワインになります。

湯呑にワインを入れても、ワインではないということです。

これと構図の話が何が関係あるのかといいますと、

構図(受け皿)を沢山頭に叩き込みます。写真の覚えたての時とかは必ずそうします。

それというのは料理で例えるのであれば、沢山の食器やグラスを購入していることと同じです。

ただ、良い皿と良いグラスがあれば美味しい料理になるのかというと、そういうわけではありません。

ここのポイントが頭で理解できないと構図が上手く使えません。

写真撮影において構図を沢山覚えたとしても、品に合わせて一番良い構図を使うのであって、構図が先行して品を入れても写真はよくないといことです。

構図が上手く使えていない時というのは、茶碗に味噌汁を入れているという逆の流れが起きていることがほとんどなんです。

だからいくら構図だけを覚えても、写真は良くならないです。

稀に写真を始めたばかりなのに、ものすごく構図が上手い人がいますが、それは今から撮影する被写体に合う器をすぐに見つけることができてしまうからです。

稀ですがそういう人のことを感覚がいいといいます。

だからまず構図を扱う時は、構図から入ったらダメなんです。

今から三分割構図を使おうということではなく、この被写体には三分割構図が似合う、という使い方が正解です、

似合う似合わないをどう決めるのかが難しいという人もいますが、難しければ自分の感覚で判断するのではなく、覚えることをおすすめします。

【こういう光景・こういう被写体にはこういう構図がいいんだ】とセットで覚えます。構図だけはダメです。

ここまでの話をなんとなくは理解しても、すぐに写真が良くなるわけではありません。

写真に限らずそうだと思うのですが、何か質的にレベルを上げようとしたときに、質を向上するという考え方よりも、質が低いものを取り除くという考え方が大切です。

構図の話でいえば、【茶碗に味噌汁を入れる】ことをやめればいいわけです。

ただそれはわかってはいても、茶碗ではなく味噌汁用のお椀に入れればいいだけですが、それが見つからないからいつも困ります。

そこで助けてくれるのが無難な容器なんです。紙コップとか紙皿とか、バーベキューする時に使えるような、オールマイティーな容器が。

構図にも無難な構図があります。その被写体に合わない構図を使って失敗するよりも、とりあえず無難な構図に被写体を入れ、おさめておく方がいいということは沢山あります。

間違いが起こらないから写真も悪くなりません。

実は無難な構図というさえ確実に使えるようになれば、それだけでいいといっていいほど完璧です。

無難な構図を基本と呼び、その基本ほど忘れられがちなんです。